スタッフコラム:リマスター日記
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静メカスタッフコラム 第5回
2016/12/09
こんにちは静メカです。
『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG Blu-ray BOX』!このBOXのすごい点を、サンライズ木内さんとフライングドッグ吉田さんと共に解説しております!
第4回までは、「セルパートとデジタルパートの均一化」「再現編集」など、Blu-ray化にあたっての本編映像について解説してきましたが、今回は購入者だけのお楽しみ、特典について触れてみようと思います。まず今回のBlu-ray BOXには、下記の映像&音声特典が収録されます。
・過去DVDに収録された映像特典を可能な限り再収録
・スタッフ、キャストによる新録オーディオコメンタリー(5話分収録)
・『GRAND GLORIOUS GATHERING』本編音声は、ステレオ音声&5.1chサラウンド音声も収録
「プロジェクトZ」や「勇者王誕生!-完璧絶叫ヴァージョン-」など、過去DVD BOXでしか見られなかった映像も、可能な限り再現編集を施した「HDリマスター版」となっています。
これに加えて付属するのが、豪華解説本「GGGアウターファイル」(B5判/152P)!TVシリーズのBlu-ray BOXをお持ちの勇者はご存知かと思いますが、アレの『FINAL』版、かつ資料的価値のより高まったものだと思って下さい。なにせ当初は「100ページ予定」として発表していたのが、最終的に約150ページと大幅に増ページされる結果となりました。それではこの本の見所を、ポイントごとに紹介します!
■ビジュアル面
『FINAL』及びTVシリーズのキャラクター&メカのカラー設定を、「GGGアウターファイル」ではほぼ網羅!また、この公式サイトのトップに君臨するジェネシックガオガイガーほか、Blu-ray BOXのために描き下ろされた宣伝ビジュアルが10点も初収録!その上、DVDジャケットで描かれていた内部メカなど版権イラスト類も掲載していたら、カラーページが当初の予定より16ページ増えたとのことです……。
■考証面
米たにヨシトモ監督による「FINALアイデアメモ」を可能な限り掲載!監督の筆による「ジェネシックガオガイガー完成までのラフ画」「ブロウクンファントム発射のプロセス」など、TVシリーズとはまた異なる『FINAL』ワールドが、どのように構築されたかを知る超貴重な資料が初公開です。また、全8巻のOVAとは思えない物量(監督、物持ちが良すぎです……)の設定資料、さらに『勇者王ガオガイガー』と『ベターマン』の関連性がひと目で分かる「アウターファイル年表」も収録。『勇者王ガオガイガー』の世界観全体が、これ1冊で俯瞰できる内容となっています。
デジパック(ディスクを収納する屏風のようなケース)イラストは、メカは中谷誠一氏、キャラは木村貴宏氏による新規描き下ろし!もちろんこのイラストの全体図も、「GGGアウターファイル」に収録されています。しかもデジパックを収納する三方背BOXのデザインは、ジェネシックフェザー仕様です。TVシリーズに引き続き、背と背面の筆文字は、米たに総監督に揮毫いただきました。(背面の文字が何かはお楽しみに!)
それ以外にも、キャラクター・メカニック解説や各話のあらすじなどを掲載した32ページフルカラーの解説書も付属しています。
5回お届けした静メカコラム、いかがだったでしょうか?OVAとはいえ全8話(『GGG』は全12話)分で、TVシリーズ全49話に匹敵するボリュームになるってどういう事なの?という位、映像も特典もこれ以上無いほど、手間も時間もかかった最高のBlu-ray BOXになっています!
まもなく来る12月21日に発売ですが、勇者の皆さんがこのBlu-ray BOXを手にした時「こうやって、大勢で作ってたんだなあ……」と思い出して頂ければ嬉しいです。
(もうちょっとだけ続きます・静メカ)

静メカスタッフコラム 第4回
2016/11/07
こんにちは静メカです。
米たにヨシトモ監督から、膨大な資料をお借りして制作している豪華特典本「GGGアウターファイル」も付属する『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG』Blu-ray BOX』!このBOXのすごい点を、サンライズ木内さんとフライングドッグ吉田さんと共に解説しております!
前回は『FINAL』の映像素材の種類と、HDリマスターの手法についてご説明しました。今回のコラムはこの内容も少し踏まえつつ、では残る「FINAL GRAND GLORIOUS GATHERING(以下文中『GGG』)」のHDリマスターはどうするの?というお話です。
まず『GGG』とは、2000年~2003年制作のOVA『FINAL』全8話に、TVシリーズの映像と『ガオガイガー』と世界観を共有する作品『ベターマン』の映像を追加、再編集し、全12話として2005年に地上波で放映されました。話の大筋は同じですが、『GGG』では、世界観やキャラの心情などがより深く描写されています。過去に『FINAL』と『GGG』とで別々にDVDソフト化されていましたが、今回のBlu-ray BOXでは両方収録されます。
そこで『GGG』のHDリマスター化を考えた時、既にあるDVDのマスターデータをそのままアップコンを行えば行えば、そこそこ画質の良いBlu-ray BOXは作れます。前回チャート図の(1)ですね。でも吉田さんと木内さんは、禁断の手法に気付いてしまったのです。
せっかくネガスキャンから作り起こした『FINAL』と
TVシリーズの映像があるのだから、それを素材に
「再現編集」すれば、最高クオリティの『GGG』に
なるのではないかと!
この「再現編集」というのが、『GGG』HDリマスターのキーワードです。実は『GGG』は『FINAL』の再編集版なだけでなく、エフェクトを付け加えるなと、映像に色々な加工処理が全編に施されています。今回、TVシリーズと『FINAL』のHDリマスター映像を使用して、皆さんがDVDで観ている『GGG』の画面と全く同じように一から再現する。これが「再現編集」です。具体的には下の画像をご覧下さい。
と、書くと簡単そうですが、要は「2005年に米たに監督が施した処理を、完成しているDVDのマスターデータから解析して一からやり直す」作業です。具体的な作業記録なんて残っていませんし、放映から10年以上経っているので、使っている機材も違います。単純に『ガオガイガー』だけでも映像素材が多岐に渡ったのに、それに加えて『ベターマン』です。皆さんここまで読んで、「え?そんな事をしていたら作業が全然終わらなくない?」という気持ちになると思います。私もなりました。
それでも編集スタジオ キュー・テックの勇者・鈴木さんの力もお借りし、最終的には見事ひとつの映像としてつながりました!
また、時期的に『GGG』は『FINAL』の後に制作されたので、音や映像を「後から直した」箇所も存在します。今回のBlu-ray BOXではそういったところも『FINAL』にフィードバックしてあるので、この辺りも画質だけでなく「最高のクオリティで、最高に手間のかかる手法」がとられています。
……という作業が、本編映像に加えて、毎回クレジットが変わるOPとED、『プロジェクトZ』、『勇者王誕生!~完璧絶叫ヴァージョン~』PVなどの特典映像などにも、可能な限り施されています。
こうして映像が完成し、Blu-ray BOX制作も佳境に入ってきました!
次は豪華解説本「GGGアウターファイル」についてご紹介していきたいと思います。
(静メカ)

静メカスタッフコラム 第3回
2016/10/13
こんにちは静メカです。
毎回「ここがすごいぞ『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG』Blu-ray BOX」を、サンライズ木内さんとフライングドッグ吉田さんと共に解説しております!
前回では「勇者王ガオガイガーFINALを構成する映像素材の種類」についてご説明しました。「16mmフィルム」「35mmフィルム」「デジタル映像」の3種類がある中、今回はそれらをどう使ってHDリマスター化するか、そして『ガオガイガー』がその中でもどれだけ特殊な手法をとられているか、をご紹介します。
ここでTVシリーズのBlu-ray BOXを見ると、オビに「ネガスキャン」と書いてありますね。
この「ネガ」とは、黒いセロハン状の「ネガフィルム」のことで(若い人には解るのだろうか……)セル画を撮影した映像の原版です。放送やビデオ商品化には、通常はネガをコピーした「マスターポジフィルム」を使用します。なぜなら、万が一ネガを破損したら、その作品の完全な状態は永遠に失われてしまうから。そのためサンライズ作品のネガは厳重に保管されており、基本的にネガスキャンは行わない方針だそうです。ファンにとっては、作品の損失なんて想像するだけでもおっかない話ですね。
ちなみにフィルムにも種類があって、木内さんは発色の良さを追求するためマスターポジフィルムに拘っていると言っていました。
そしてプリントや編集を繰り返して、ネガから離れるほど映像の画質は劣化していきます。そんな事を踏まえて下の図をご覧下さい。
TVシリーズに続き、今回の『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG』でも行われている「ネガスキャン」とは、上の図の(4)にあたります。ネガから直接スキャンした、これ以上は存在しない超・最高画質なのです!
これはネガを持ち出すリスクを冒してでも、最高のHDリマスターをしたい!ずっとBlu-ray化を待っていた勇者たちの声に応えたい!という気持ちで実現した、異例の事態です。ただのキングジェイダー好きだった私が、ここでコラムを書けるようになったのと同じように、勇気があれば夢は叶うのです。『ガオガイガー』って全体的にそういう空気感が漂っている作品です。
木内さん曰く「いや~たまたま運良く、ネガスキャンを使える条件が整っただけなんですけどね。社内調整が上手くいったといいますか」とのこと。
ネガが存在しない後半のデジタル部分も、マスターデータを劣化させない(ただし、時間とコストのかかる)映像業界でも最高レベルのアップコンバートを施しているので、そこはご安心ください。『FINAL』第6話で登場したジェネシックガイガー(下画像)も、DVD版より線がシャープに、色味も鮮やかになっています。クリックで画像が拡大されるので、ぜひ確認してみて下さい。
このように、各種映像素材を最高画質でデータ化し、粒状感(画面のツルツル、ザラザラした質感)や色味を整えることで、一本の「勇者王ガオガイガーFINAL HDリマスター版」が出来あがるのです。
ただ、最初のチャートをよーく見ると解りますが、ネガスキャンをするという事は、DVD版で済んでいた作業等がゼロに巻き戻ります。なのでゴミ取りや色調整作業を改めてやり直したり、この作品ではTVシリーズのカットを加工して使用している回想シーンを解析して、TV版Blu-ray時に制作したHDリマスター映像から再現したり、と手間や資料チェックも最高にかかるやり方なのです……。
2回にわたり解説しましたが、『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG』のHDリマスターは「ネガ原版から高精細(high definition)でデータ化し、映像をもう1回最初から作り直し(Remaster)して、これ以上ない高画質を実現している」という、ハイエンドを極めた手法で制作されています!木内さんの「GクリスタルからGストーンを作るようなもの」の言葉で、勇者の皆様ならそのクオリティが解って頂けるはずです。
そしてもうひとつ、今回のBlu-ray BOX『勇者王ガオガイガーFINAL & GGG』のタイトル通り、2005年に再編集され、全12話に新生した「GRAND GLORIOUS GATHERING」(以下「GGG」)も同時収録、過去のDVDに収録された映像特典も可能な限り再収録されます。
全8話の『FINAL』本編でこれだけの手間をかけていたのに、TVシリーズと『ベターマン』の映像が加わった「GGG」全12話、さらに映像特典のリマスター作業……!次回は「この辺もとんでもない事になっていた」についてご紹介します。
(静メカ)

静メカスタッフコラム 第2回
2016/09/17
こんにちは静メカです。
前回コラムに引き続き「ここがすごいぞ『勇者王ガオガイガーFINAL』Blu-ray BOX」を、サンライズ木内さんとフライングドッグ吉田さんと共に解説させて頂きます!
発売日も12月21日に決定し、HDリマスター現場も毎回こんな感じで和気あいあいです。
キレイな映像で『ガオガイガー』を観られるのは嬉しいけど、そもそも「HDリマスター」ってなあに?『FINAL』は後半デジタルで作られていたから、そのデータをBlu-rayに収録すれば済むんじゃないの?TV版より楽だと思うんだけど。……など、私も『FINAL』Blu-ray BOXへは素朴な疑問を抱いていたわけです。それを今回から皆さんと一緒に解いていこうと思います。
まず皆さんは、すでにTV、FINALそれぞれのPVで、HDリマスターされた映像を見たと思います。発色が良くなり、映り込んだゴミやフィルム撮影時の揺れなども除去(この作業、目視で1コマずつチェックするんですよ)されて、放映時やDVDの映像より驚くほどキレイになっていましたね。
『勇者王ガオガイガーFINAL』は、ご存知の通りひとつの作品の中で「セル画」「CG」「デジタル」が混在している、非常に珍しい作品です。特に『FINAL』では、ガオガイガーの原種戦を回想し、ガオファイガーが京都で戦い、ジェネシックガオガイガーが復活する……という流れだけで、使用されている映像の種類が多岐に渡ります。
その「本編映像を構成する素材の種類」は、下の3つに分類されます。
(1)16mmフィルム
セル画をフィルム撮影したもの。TV版がこれにあたります。
(2)35mmフィルム
セル画をフィルムに撮影したもので、『FINAL』第1話~第4話がこれにあたります。
また『FINAL』第1話~第4話では、CGをビデオに出力したものも使われています。
(3)デジタル映像
線画をスキャンし、データ化したものをデジタル彩色、撮影したもの。現在のアニメはほぼこの手法。『FINAL』第6話~第8話がこれにあたります。
※第5話は、フィルム撮影とデジタル素材が混在しています。
↑細い方が16mm、太い方が35mmフィルム。35mmの方が高解像度で、現在でも映画などでも使われている。
この中で、各素材を現在の機器でデータ化し、観ていて一般的に「キレイ」と感じる、つまり解像度が高い順に並べると
(2)35mmフィルム>(1)16mmフィルム>(3)デジタル
となります。
今の感覚からすると、フィルムが一番高画質というのが意外かもしれませんが、『FINAL』のデジタル映像は製作時(2000年代初頭)の解像度なのでこの順番となるのです。
この3種類の映像が行ったり来たりする『FINAL』全編を、どうやってハイクオリティなHD映像、すなわち「発色が良く、大画面にも耐える高い解像度で、続けて観ても違和感のない映像」にするか、が今回の命題なんだそうです。どうです、聞いただけでTV版よりハードル高いでしょう。やっとゾンダーを倒したのにもっと強い原種が来たみたいな展開!
そして実現しました!この下カットをご覧下さい。(クリックで拡大されます)
せっかく作るなら良い物を!という事で基準は35mmフィルム画質に寄せて、できるだけ高画質を目指しています。フィルムも、最高画質でデータ化したい……!と、『勇者王ガオガイガーFINAL』では「ネガスキャン」という手法を採っています。
今回のコラムでは、とりあえず「映像素材が3種類ある」ということをご説明しました。次回はここからどうやって究極のBlu-ray BOXを作っていくか、というお話に進みますので、お楽しみに!
(静メカ)